健康診断というと『病気を早期発見して早期治療するためのもの』というイメージが強いと思います。
確かに体の異変を早めにキャッチして原因を突き止めて治療を始めるというのは大切な事ですし、その為に健康診断が大切なのも事実です。
その為には健康診断の検査数値を正しく読み取る事が重要になります。
そのほかにも検査数値を正しく読み取る事は生活習慣を見直して病気を未然に防ぐという機会を得るという側面も持っています。
アナタは健康診断の結果を正しく認識出来ていますか?
ここでは一般的な健康診断の結果の見方をまとめていきたいと思います。
健康診断の主な検査項目と結果の見方
健康診断はとても多くの項目を検査しています。
また年齢によって検査項目が変わってきます。
一般的に35歳未満は若年層健診、35歳以上は生活習慣病健診を受けるというパターンが多いのではないでしょうか?
会社の方針や加入している健康保険によって様々なパターンはあると思いますが一般的には上記のような内容が多いと思います。
ここでは一般的な健康診断の検査項目と結果の見方について記して行きたいと思いますのでアナタの健康診断の結果を照らし合わせて見て下さい。
血圧測定
基準値:収縮期血圧140mmHg未満
拡張期血圧90mmHg未満
血圧というのは心臓が全身に血液を送り出す時に血管にかかる圧力の事を言います。
よく『上が○○で下が○○』と表現しますが、上というのは心臓が収縮して血液を送り出す時の血圧の事で収縮期血圧と呼びます。
そして下というのが心臓が拡張して血液が心臓に流れ込む時の血圧の事で、拡張期血圧と呼びます。
高血圧という言葉を聞いた事があると思いますが、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧は90mmHg以上で高血圧と診断されます。
ただ、私たちの血圧は常に一定ではなく運動をした時などに一時的に上昇する事が多々あります。
そうした一時的な血圧の上昇は高血圧という判断はされずに、血圧の異常値が慢性的に続く状態を高血圧とします。
高血圧を放置していると動脈硬化をはじめとする様々な合併症を併発し、動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳卒中、腎不全などを引き起こす危険な状態になります。
血圧をコントロールするためには
高血圧の危険因子として、真っ先に塩分の取り過ぎがあげられます。
そして喫煙、肥満、運動不足、お酒をよく飲む人やストレスが多い人というのは高血圧になりやすいと言われています。
高血圧は他の生活習慣病を合併しやすく脂質異常症や糖尿病などがある人も高血圧になりやすいと言われています。
特に脂質異常症は動脈硬化を促進させる大きな要因になるので高血圧も進みやすいと言えます。
★血圧が高い人は塩分を控えるようにしましょう。
血液検査(脂質)
■LDLコレステロール
基準値:140mg/dL未満
体に必要なコレステロールは肝臓などで合成されてLDLによって全身へ運ばれています。
このLDLに含まれているコレステロールがLDLコレステロールです。
LDLコレステロールが過剰になると血管の内壁にこびりついて動脈硬化を促進させてしまうので悪玉コレステロールとも呼ばれています。
★基準値より高い場合は脂質、コレステロールを多く含む食品は控えましょう。
■HDLコレステロール
基準値:40mg/dL未満
体内の余分なコレステロールや血管に付着したコレステロールはHDL(高比重リポたんぱく)が回収して肝臓へ戻します。
このHDLに含まれるコレステロールがHDLコレステロールです。
どうを防ぐ効果を持つので善玉コレステロールと呼ばれ基準値より少なすぎると動脈硬化を促進させてしまいます。
★基準値より低い場合はトマトを摂取すると良いです。
■中性脂肪(TG、トリグリセライド)
基準値:150mg/dL未満
日常の活動や生命活動を支えるエネルギー源となる脂肪で体脂肪として蓄積されていくので内臓脂肪が過剰になると動脈硬化性疾患を起こしやすくなります。
中性脂肪はトリグリセライドと呼ばれて健康診断の結果には『TG』と表記されています。
中性脂肪にはLDLを小型化して血管壁に入り込みやすくしたりHDLコレステロールを低下させる働きがあり中性脂肪が多すぎる高トリグリセライド血症は動脈硬化を促進させる一因になります。
中性脂肪は計測された数値によって改善方法が変わります。
30~149mg/dLは正常値です。
150~299mg/dLは軽度高中性脂肪血症です。
300~749mg/dLは中等度高中性脂肪血症です。
750mg/dL以上は高度高中性脂肪血症です。
ちなみに、中性脂肪は高い事にばかり目が向きがちですが、逆に29mg/dL以下は低中性脂肪血症と呼び低すぎるのも問題です。
高い場合も低い場合も基本的には生活習慣の改善というのが基本的な療法になります。
ただし中等度高中性脂肪血症以上になると投薬や禁酒といった改善対策を必要とします。
★数値によっては禁酒や薬物治療などを行います。
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血液検査(肝機能)
■AST
基準値:13~30U/L
■ALT
基準値:男性10~42U/L
基準値:女性7~23U/L
肝機能を調べる代表的なものでASTとALTはともに肝臓などの様々な臓器の細胞に含まれている酵素です。
臓器が傷むと血液中に過剰に増えてきます。
【AST】
肝臓や心筋などの細胞に多く含まれていてウィルス性肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がんなどの肝臓の病気や心筋梗塞の予兆を知る手がかりになります。
【ALT】
肝臓の細胞に多く含まれていて肝臓の病気や胆道炎や総胆管結石など胆道の病気が原因で数値が上がります。
■γ-GTP
基準値:男性13~64U/L
基準値:女性9~32U/L
γ-GTPはガンマジーティーピーと言って肝臓をはじめとする膵臓(すいぞう)や腎臓などに含まれる酵素で特に肝機能が障害されると数値が上昇します。
胆道の病気でも数値が上がるのですがアルコールや食事の影響を反映しやすいので健診前に摂生して数値が低下するならアルコール性肝障害や食べすぎによる脂肪肝が疑われます。
★お酒を飲み過ぎたり脂っこい食事ばかりという人は要注意。
肝機能の異常まとめ
生活習慣に要因があるアルコール性肝障害や脂肪肝は節酒や禁酒、食生活の改善に適度な運動というのが重要になります。
最近はアルコールを飲まない人に発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が注目されていて発症すると肝臓に慢性的な炎症が起こり、進行すると肝硬変や肝ガンになる事があります。
過食による肥満や糖尿病や脂質異常症、高血圧を合併すると発症するリスクが高まります。
血液検査(血糖)
■空腹時血糖(FPG)
基準値:73~109mg/dL
血液中に含まれるブドウ糖を血糖と言って10時間以上絶食した後の空腹時の血糖値を空腹時血糖値と言います。
普通、血糖値は食後に上昇して時間の経過と共に低下していきます。
■HbA1c(ヘモグロビンA1c)
基準値:4.6~6.2%(NGSP値)
血糖値が高い状態が続くと血液中の赤血球の成分であるヘモグロビンとブドウ糖が結びついてグリコヘモグロビンが出来ます。
このグリコヘモグロビンがHbA1cなんです。
HbA1cを調べる事で直近1~2ヶ月の血糖値の平均的な状態を知る事が出来ます。
空腹時血糖やHbA1cが高い値を示す時は耐糖能異常(糖尿病予備軍)や糖尿病が疑われます。
血糖をコントロールするために
日本人の糖尿病のほとんどはカロリーの取り過ぎや運動不足、ストレス過多といった生活習慣が原因の2型糖尿病です。
食生活は糖質を抑えて脂質を控えて適正カロリーを守る事が大切です。
血液検査(尿酸)
■尿酸(UA)
基準値:7.0mg/dL以下
尿酸は体内で細胞が生まれ変わる時に作られるプリン体という物質の最終代謝産物です。
通常、老廃物として尿とともに排出されるのですが尿酸が過剰につくられたり、上手く排出されないと血液中の尿酸値が上昇します。
血液中の尿酸値が高すぎる状態を高尿酸血症と言って放置していると尿酸が結晶化して足の親指などの関節部に沈着して炎症や激痛を起こす、いわゆる『痛風』を起こします。
痛風は若年化している?
痛風といえば男性に多く見られる病気で、かつては40~50代が発症のピークだったんですが、最近は食生活の変化などから若年化が進んでいて20代~30代での発症も増加しています。
尿酸値を上昇させる最大の危険因子は肥満です。
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X線検査
■胸部X線検査
基準値:異常所見なし
胸部にX線を照射して撮影した透過像を見て肺や気管、心臓や大動脈、縦隔や胸膜に病変がないかを調べます。
病気がある場合は病変部が『怪しい陰影』として確認され異常所見として結果にあらわれます。
ただ、すでに治っている肺炎や結核の跡が異常影として映る事もあるので、異常所見が認められても診断の確定には詳しい検査が必要になります。
【胸部X線でわかる病気】
肺炎、肺結核、肺ガン、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺気腫、胸膜炎、心肥大、心弁膜症、大動脈瘤など
■胃部X線検査
基準値:異常所見なし
胃を膨らませる発泡剤とバリウムという造影剤を飲んでから胃部にX線を照射して撮影します。
食道、胃、十二指腸といった臓器に狭窄(きょうさく)や変形がないかを調べます。
【胃部X線でわかる病気】
食道ガン、食道炎、胃ガン、胃・十二指腸潰瘍、胃炎、胃ポリープなど
心電図検査
基準値:異常所見なし
心臓が収縮・拡張する際に発生する微弱な電気信号を皮膚に付けた電極でとらえて時間的な変化を波形で表します。
電気信号の伝わり方や心筋に異常があると波形が乱れます。
【心電図検査でわかる病気】
不整脈、狭心症、陳旧性心筋梗塞、心肥大、冠動脈硬化、心筋症など
便潜血(べんせんけつ)反応
基準値:陰性(-)
いわゆる検便と言って、症か管に出血があると便の中に肉眼ではわからない微かな量の血が混じる事があります。
これを便潜血といって大腸ガン、ポリープや大腸の炎症などで陽性になります。
ガンの出血というのは日によってバラつくので標準的には2回法といって2回検査して1回でも陽性なら陽性と判定されます。
検便で便を2回取るのは、このような理由からなんです。
さいごに
年に一度は健康診断を受けて自分の検査値の推移などを確認して健康状態を把握しましょう。
自分の健康状態を把握する事が健康を保つ為に大切な事です。
要再検査の判定を受けても軽く考えて再検査をしない人も多いですが、再検査の判定を無視してしまうのなら、そもそも健康診断を受ける意味がないですよね?
再検査が必要という判定を受けたら、必ず再検査を受けるようにしましょう。
また日頃から生活習慣を改善する意識を持つ事も大切です。
基本的な改善ポイントは
・適正体重をまもる
・3食規則正しく食べる
・過食をしない
・間食を控える
・動物性脂肪を控えて、青魚を積極的に食べる
・野菜や海藻類を積極的に食べる
・お酒は週2回は休肝日を設ける
・なるべく歩くようにする
・タバコは控える
といった事を少しでも意識してみましょう。
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