自動車事故というのは誰が、いつ起こしてもおかしくはない事でアナタが加害者になる場合も被害者になる場合もあります。
そんな自動車の事故では90%が示談によって解決しているということは、あまり知られていません。
自動車事故によって人損や物損が発生すると加害者には民事上の損害賠償という責任問題が発生します。
この民事上の問題を解決するためには主に3つの手段が用いられます。
①簡易裁判所での調停
②通常裁判
③示談
ここでは示談とは何?という事や示談交渉の仕方といった事をご紹介していきたいと思います。
示談って何?
示談というのは、事故当事者が双方の話し合いによって問題の紛争を処理っする事で和解契約とも呼ばれます。
例えば事故を起こしてしまった場合に加害者が『〇〇円の損害金を支払う事を約束します』と被害者に打診をして被害者がその内容に納得して同意した場合や
反対に被害者が加害者に『〇〇円の損害金と通院費を支払ってくれたら示談しますよ』と打診し加害者がこれに同意した場合も示談の成立になります。
人身事故のおよそ90%が示談で解決しているのですが、示談の大きなメリットというのは賠償額を双方で話し合って増減できたり、支払いを分割払いに出来ると言った柔軟な解決ができたり
問題解決までの時間が大幅に短縮できるといったメリットが大きいです。
とはいっても何のトラブルもなく示談交渉が終わるのかというと、実はそうでもないので注意が必要です。
示談交渉をする時の注意点は?
示談交渉で最も注意しなければならないことは実際に賠償してもらえないというトラブルです。
示談交渉の席では神妙な態度で賠償を約束したにも関わらず、いざ示談が成立すると全く賠償してくれなく、加害者に賠償の履行を要求しても連絡がつかないといった事例は沢山あります。
そういったトラブルを事前に防ぐには『示談書』を取り交わす事が大切です。
示談書の書式には特に決まりはありませんが、下記のような書式を用意すると問題ないでしょう。
示談書の書式に簡易的な書式を作ってみましたので、参考にしてみたり、もちろんそのまま使っていただいても構いません。
示談書で大切なことは、問題となっている内容と合意した和解の内容をはっきりと明記する事です。
示談書で注意するべき事
示談書の書式は自由で決まりはないと書きましたが、やはり注意しておきたいポイントはあります。
アナタが加害者なのか被害者なのかにもよって注意点が変わりますので、それぞれの立場から注意すべきポイントを見ていきましょう。
【アナタが加害者の場合】
アナタが加害者の場合、示談の成立を急ぎたくなる心理が生まれやすいです。
なぜかというと、まず被害者の心変わりが怖いという心理が働くからで、示談は当然被害者が同意しなければ成立しないので加害者心理としては被害者の心変わりという事態はさけたいわけです。
また示談の有無に関わらず、重大事故の場合は刑事事件に発展し警察による捜査を経て捜査結果が検察へ送られ起訴か起訴されないかが決まるのですが
示談の成立というのは起訴を猶予する際の有力な判断材料になります。
こういった理由から加害者というのは無意識的に示談を早く成立させたいと考える傾向があります。
そうなると、とにかく示談を成立させたいという一心で自分にとって不合理な内容でも飲んでしまう場合があります。
これが事故を起こした直後の示談締結の場合は例えその場で示談書を交わしたとしても『事故直後の気が動転している時の書面』というのは効力が認められません。
ただ事故から時間が経っている場合の示談書の効力は有効なので、たとえ理不尽な内容であっても示談が成立してしまえば、その内容を撤回変更することはできません。
なので、示談を急ぎたい気持ちもわかりますし、加害者として誠意は見せなければいけないのも当然ですが、過大で理不尽な請求には応じないようにしましょう。
アナタが示談交渉代行付きの保険に加入している場合は示談交渉は保険会社がしてくれるのですが、示談交渉代行付きの保険に加入していない場合は自分で被害者側と示談交渉をすることになります。
この場合は被害者側が過大な請求をしてくるケースがあるので、決して過大な請求を受け入れないようにしましょう。
【アナタが被害者の場合】
アナタが被害者の場合に注意することは、原則として示談が成立したら示談で決めた金額以上の請求は出来なくなるという事です。
なので、示談書を加害者側が用意していきた場合、結局いくらお金がもらえるのかという『最終支払い金額』をしっかり確認してください。
示談書は加害者側の保険会社や加害者本人が用意してくる事が多いのですが最終的にいくら支払ってもらえるのか明記されているのかは絶対に確認しましょう。
私としては加害者側の示談書は採用せずに被害者が示談書を作成した方が安全だと思います。
また、示談を行うのが事故から数日程度の場合、後遺障害の部分を確定出来ませんし予測も難しいと思います。
なので、示談書に後遺障害が発生した場合には別途協議するという旨を記載しておくと安心でしょう。
スポンサーリンク
示談交渉を始めるタイミングは?
事故を起こしてしまうと一刻も早く示談交渉をしたいという心理が働きますが、あまりにも急ぎ過ぎるのは相手を急かす事にもなりますし、悪い印象を与えてしまう場合があります。
基本的に示談交渉は損害額が算定できるようになってからというのが一般的です。
これは加害者が損害賠償する場合でも、被害者が損害賠償を請求する場合でも慰謝料を含めて金額を具体的に明示しなければならないからです。
また事故が障害事故なのか死亡事故なのかによっても示談交渉の開始時期に違いがでるので詳しく見ていきましょう。
傷害事故の場合
交通事故が傷害事故の場合は基本的には怪我が完治してリハビリの必要が無くなったり完治のメドがついた頃になると事故による治療費や入院費、過失利益、休業日数などが計算できるようになるので
示談交渉の開始時期としては一番良いタイミングだと思います。
傷害事故の場合は後遺障害等級申請を行うか、行わないかという被害者の意向も関わってきます。
後遺障害等級の申請を被害者がしない場合は示談交渉の開始時期は『治療が終了してから』になるでしょう。
後遺障害等級の申請を被害者がした場合は被害者の申請に対して加害者側の保険会社から該当等級や非該当などの回答があるので、示談交渉は
保険会社からの回答があってからという事になります。
死亡事故の場合
起こしてしまった事故が死亡事故だった場合は被害者が死亡した時点でほとんどの損害項目は算定可能なのですが、葬儀関係の費用は当然、葬儀が終了しなければわかりません。
なので、示談交渉の開始時期は被害者の葬儀が終わってからになりますが、通常は遺族の慌ただしい状況がひと段落する49日の法要が済むまではしない方が良いでしょう。
示談を急ぐあまり遺族が慌ただしい時に示談交渉をするという事はやめましょう。
示談交渉前に準備しておく書類
示談交渉をする前にあらかじめ用意しておきたい書類があります。
まずは事故証明書が必要で、事故証明書は事故が起きた原因や経過を確認するために必要な物なので、自動車安全運転センターに交付を申請して下さい。
もしも死亡事故の場合は損害賠償が出来るのは被害者の相続人になるので自分が相続人であることを証明するために死亡した被害者の除籍謄本と相続人であるアナタの戸籍謄本が必要になります。
また治療の内容の証明のために診断書、診療報酬明細書や領収書なども用意しましょう。
死亡事故の場合は葬儀費用などの明細や領収書なども保管するようにしてください。
傷害事故で休業した場合は当然休業中の給料に相当する金額が損害賠償として認められますし、死亡事故の場合は事故が無ければ生涯で稼いでいたであろう給料や退職金なども損害賠償に算入できます。
どちらにしても給料関係の金額の証明をするには会社員であれば源泉徴収票、所得証明書、給与明細があればよいでしょう。
個人事業の場合は確定申告の写しや納税証明書があれば良いです。
示談交渉に必要な書類 | |
事故証明書 | 自動車安全運転センターに申請する |
除籍・戸籍謄本 | 除籍謄本(被害者死亡の場合) 戸籍謄本(相続証明のため。) |
診断書など | 診断書 診療報酬明細書 その他の領収書 |
収入証明書 | 源泉徴収票 所得証明書 確定申告書の写し 葬儀費用などの領収書等 |
スポンサーリンク
損害額の計算方法は?
損害賠償と言っても、その損害額は適当に大金を請求すれば良いわけではありません。
被害者の損害は裁判所や弁護士基準でキチンと計算しなければいけません。
とは言っても『裁判所や弁護士の基準がわからないんだよ!』と思う人がほとんどだと思います。
実はこの裁判所や弁護士の計算基準は『赤い本と青い本』という本があって、この本は赤本は民事交通事訴訟損害賠償額算定基準という正式名称で日弁連交通事故相談センターの東京支部が発行しています。
青い本は交通事故損害額算定基準という正式名称で日弁連交通事故相談センター本部が発行しています。
赤と青の違いは、赤本は東京基準で青本は全国基準と言われていますが、実際には全国的に赤い本を用いて示談を行うケースが多いのが現状です。
赤い本は2016年に一部改訂されているので参考にする場合は最新の2017年版を見る事をお勧めします。
この本は損害額の算定をするには必須なので最寄りの図書館などで借りるなどしてみた方がよいでしょう。
さいごに
被害者にとっての示談交渉というのは必ずしも納得の出来る金額や条件が提示されるとは限りません。
特に保険会社というのは賠償の金額に査定基準というものを設けていて、示談の交渉の中でその基準を超えて支払いをするという事はあまりありません。
この保険会社の査定基準は保険会社の独自の基準であって納得できないなら保険会社との示談交渉を打ち切っても構いません。
この場合は大抵の場合、保険会社の専属の弁護士が示談交渉を引き継いでくると思います。
弁護士は保険会社の独自の査定基準にとらわれずに交渉してくる事が多いので、この弁護士との交渉で納得の出来る提示を受けるケースというのは多いです。
それでも納得ができない結果になった場合は第三者機関による示談のあっせんを受ける事も可能です。
示談のあっせんは日弁連交通事故相談センターか交通事故紛争処理センターによるもので裁判所の算定基準を元に示談のあっせんをしてくれるんです。
どちらも弁護士が無料であっせんしてくれます。
最終的にどうしても納得できない場合は弁護士に依頼して裁判所に民事訴訟を提起することになるでしょう。
スポンサーリンク